立体構造を鑑賞して楽しもう!トゥールビヨン機械式腕時計
トゥールビヨンは、音で時刻を知らせるミニッツリピーター、永久カレンダー(パーペチュアルカレンダー)と並ぶ世界三大複雑機構のひとつです。特にトゥール ビヨンは、複雑さと美しさを兼ね備えた技術として知られています。
トゥールビヨンは、技術力の高いブランドのみが生み出せるものです。今回は、トゥールビヨンの仕組みと搭載モデルを紹介していきます。
【トゥールビヨンとは?仕組みと魅力】
トゥール ビヨンとは、フランス語で「渦」という意味です。渦を巻くように回るパーツの様子から名付けられています。
トゥール ビヨンは、見た目にも美しい機能です。ここからは、トゥール ビヨンが誕生した背景と仕組みについて説明していきます。
■トゥールビヨンとは?誕生の理由
17世紀から18世紀の頃は、ゼンマイで動く改修時計が携帯用の時計として使われていました。懐中時計は上着のポケットにいれるのが一般的でしたが、常に同じ方向に重力がかかると次第にゼンマイがたわんでしまい正確な時を刻むことが難しくなります。
アブラアン=ルイ・ブレゲは、懐中時計の精度が重力の影響を受けない仕組みを作り、1801年6月26日に特許を取得しました。それがトゥール ビヨンになります。
■トゥール ビヨンの仕組み
機械式時計は香箱車(1番車)に収められたゼンマイが元に戻ろうとするときに、力が2番車・3番車・4番車・脱進機のガンキ車と到達していくことで動きます。
脱進車はヒゲゼンマイを内蔵したテンプが一定の速度で振り子運動をおこなうと、アンクルと呼ばれる爪のようなパーツが一定のリズムで左右にふれます。ガンキ車とかみ合うことで、時計を一定の速度で動かす部分を指します。
通常4番車には秒針が付きますが、トゥール ビヨンは脱進機(ガンキ車・アンクル・テンプ)をキャリッジと呼ばれるかごに入れて4番車の上にのせています。キャリッジごと回転させることで、重力による影響を分散させたのです。
■トゥールビヨンと腕時計
トゥール ビヨンは、一定の方向にかかる重力によって生じる時間のズレを防ぐために作られました。腕時計は腕が動くことで重力が分散されるため、トゥール ビヨンは本来必要ではありません。
トゥール ビヨンの高度な技術は、多くの時間を必要としますが見た目に美しいです。機械式時計の中でも、最上位のステータスとして利用されています。
【トゥールビヨンを搭載した機械式腕時計!オススメモデル】
トゥール ビヨンは、機械式腕時計の象徴ともいえるシステムです。1000万円を超える高級モデルが多く存在します。
ここでは、トゥール ビヨンを搭載したオススメのモデルを紹介していきます。ブランドごとに異なるデザインにも注目してください。
■タグホイヤー カレラ CAR5A8K.FT6172
商品ページはこちら
タグホイヤー カレラ CAR5A8K.FT6172の仕様:
直径:45mm
ムーブメント:自動巻き(キャリバーホイヤー02T)
パワーリザーブ:約65時間
防水: 10気圧(100m)
蜂の巣をイメージしたデザインが特徴的なモデルです。6時の位置に、ライムグリーンカラーのトゥール ビヨンが付いています。
トゥール ビヨンを保護するキャレッジに使用しているのは、チタンとカーボンです。時計本体のケースにも、ブラックチタンを使用しています。
■タグホイヤー カレラ クロノグラフ CAR5A8Y.FC6377
商品ページはこちら
タグホイヤー カレラ クロノグラフ CAR5A8Y.FC6377の仕様:
直径:45mm
ムーブメント:自動巻き(キャリバーホイヤー02T)
パワーリザーブ:約65時間
防水: 10気圧(100m)
ブラックの文字盤の一部から時計内部が見えるデザインを取り入れたモデルです。クロノグラフ機能を搭載しており、4分の1秒単位で12時間まで時間を計測することができます。
チタンとセラミックを組み合わせたベゼルに付いているのは、速度計測に使用するタキメーターです。6時の位置には、1分間で1回転するトゥール ビヨンを搭載しています。
タグホイヤーのトゥール ビヨンは、200万円以下で購入できるモデルも多いです。スポーティなデザインも、他のブランドにはない魅力になります。
■ジャガールクルト ランデヴー・ジュエリー・トゥール ビヨン Q3413480
出典:ジャガールクルト公式サイト
ジャガールクルト ランデヴー・ジュエリー・トゥール ビヨン Q3413480の仕様:
直径:39mm
ムーブメント:自動巻き(キャリバー978)
パワーリザーブ:約45時間
防水:5気圧(50m)
ブルーの文字盤に、シルバーの針とインデックスを組み合わせたモデルです。アラビア数字のインデックスには、マザーオブパールを使用しています。
トゥール ビヨンに付いているのは、シルバーのブリッジです。文字盤だけでなく、ホワイトゴールド製のケースの側面やベゼルの部分にもダイヤモンドが敷き詰められています。
■ジャガールクルト マスター・ウルトラスリム・トゥール ビヨン Q1682401
出典:ジャガールクルト公式サイト
ジャガールクルト マスター・ウルトラスリム・トゥール ビヨン Q1682401の仕様:
直径:40mm
ムーブメント:自動巻き(キャリバー978G)
パワーリザーブ:約45時間
防水:5気圧(50m)
エッグシェルアイボリーの文字盤に、ピンクゴールドの針を組み合わせたモデルです。インデックスやベゼルにダイヤモンドを使用しています。
文字盤の6時の位置に付いているトゥール ビヨンのブリッジに使用しているのは、ケースと同じローズゴールドです。ジャガールクルトのトゥール ビヨン搭載モデルは、華やかなモデルが多く価格は1000万円を超えます。
■フランクミュラー グランドセントラルトゥール ビヨン CX40TCTR AC5N
出典:フランクミュラー公式サイト
フランクミュラー グランドセントラルトゥール ビヨン CX40TCTR AC5Nの仕様:
ケースサイズ:58.7mm×40.16mm
ムーブメント:自動巻き
パワーリザーブ:約4日間
グランドセントラルトゥール ビヨンは、2021年の新作です。トゥール ビヨンは、6時の位置ではなく文字盤の中心にきています。
時針と分針がトゥール ビヨンの周りを回っているのも特徴的です。CX40TCTR AC5Nは、シルバーの文字盤にゴールドのケースを組み合わせています。
■フランクミュラー クレイジーアワーズ トゥール ビヨン 7880TCHENG PT
出典:フランクミュラー公式サイト
フランクミュラー クレイジーアワーズ トゥール ビヨン 7880TCHENG PTの仕様:
ケースサイズ:50.4mm×36mm
ムーブメント:手巻き
バラバラに並んだ数字が特徴的なモデルです。トゥール ビヨンが付いているのは6時の位置で、ケースの裏側からは美しい装飾を施したムーブメントを見ることができます。
フランクミュラーのトゥール ビヨンは、樽のようなトノウ型の文字盤と組み合わせているのが大きな特徴です。個性的なデザインも楽しめます。
■ゼニス クロノマスター エルプリメロ オープン 51.2080.4061/69.C494
商品ページはこちら
ゼニス クロノマスター エルプリメロ オープン 51.2080.4061/69.C494の仕様:
直径:42mm
ムーブメント:自動巻き(キャリバーエルプリメロ4061)
パワーリザーブ:約50時間
防水:10気圧(100m)
ホワイトの文字盤にゴールドの針とインデックスを組み合わせたモデルです。インナーベゼルには、タキメーターが付いています。
3時の位置に付いているのは30分積算計で、6時の位置に付いているのは12時間積算計です。文字盤の10時の部分からムーブメントが見えるデザインになっています。
■ゼニス デファイ エクストリームダブルトゥール ビヨン 65.9100.9020/21.l200
出典:ゼニス公式サイト
ゼニス デファイ エクストリームダブルトゥール ビヨン 65.9100.9020/21.l200の仕様:
直径:45mm
防水:20気圧
2021年に世界限定8本登場したモデルです。ケースには、ホワイトゴールドを使用しています。
8時の位置に付いているのは、60秒で1回転する時刻表示用のトゥール ビヨンです。脱進調速機の動く速さを示す振動数は36000振動なので、高い精度が期待できます。
10時の位置に付いているのは、6秒で1回転するクロノグラフ用高速トゥール ビヨンです。クロノグラフは、100分の1秒単位で30分まで計測できます。
【日本で誕生!グランドセイコーのトゥール ビヨン】
グランドセイコーは、1960年に国産初の時計を世界に発信するために誕生した派生ブランドです。平面を意識したセイコースタイルを常に取り入れています。
グランドセイコーは、2020年に2種類のムーブメントを生み出しました。ベースのひとつになったハイビートムーブメントを搭載したモデルも併せて紹介します。
■グランドセイコー メカニカルハイビート36000 SBGH043
出典:グランドセイコー公式サイト
グランドセイコー メカニカルハイビート36000 SBGH043の仕様:
直径:40mm
ムーブメント:自動巻き(キャリバー9S85A)
パワーリザーブ:約55時間
防水:10気圧(100m)
シルバーの文字盤に、シルバーの針とインデックスを組み合わせたモデルです。ケースとブレスレットには、シルバーのブライトチタンを使用しています。
搭載しているムーブメントの振動数は36000振動です。脱進調速機が動くスピードを示す振動数が多いほど精度も高くなります。
■T0(ティー・ゼロ)コンスタントフォース・トゥール ビヨン
グランドセイコーは、2020年9月にT0(ティー・ゼロ)コンスタントフォース・トゥール ビヨンを発表しました。キャリバー9SA5は製品化に向けて開発されましたが、T0は製品化にこだわらずに精度の向上のみを目指しています。
T0は世界で初めてコンスタントフォースとトゥール ビヨンを同軸に搭載して、バネの力でキャリッジそのものを回転させる仕組みを取り入れました。コンスタントフォースとは、ゼンマイの力を別の小さなバネに蓄えて、そのバネが元に戻ろうとする力で振り子やテンプを動かす仕組みを指します。
精度を高めるために緩急針を持たないフリースプラングテンプやツインバレルも搭載されました。T0は現在「グランドセイコー 雫石」に展示しています。
■グランドセイコー 60周年記念限定モデル SLGH002
出典:グランドセイコー公式サイト
グランドセイコー 60周年記念限定モデル SLGH002の仕様:
直径:40mm
ムーブメント:自動巻き(キャリバー9SA5)
パワーリザーブ:約80時間
防水:10気圧(100m)
2020年にグランドセイコー60周年を記念して、100本限定で販売されたモデルです。シルバーの文字盤に、ゴールドの針とインデックスを組み合わせています。
2020年に登場したキャリバー9SA5の振動数は36000振動です。通常はゼンマイの動きがガンキ車からアンクルを通じてテンプを動かしますが、それに加えてガンキ車から直接テンプに衝撃を与えるデュアルインパルス脱進機を搭載しています。
さらにゼンマイを巻き上げるバレルを2つにすることで、ゼンマイを巻き上げる力も2倍になりました。また精度の調整には、緩急針を使わない「グランドセイコーフリースプラング」と呼ばれる方法を採用しています。
【まとめ】
今回はトゥール ビヨンの仕組みと搭載モデルを紹介しました。重力による影響を少なくするトゥール ビヨンは、本来腕時計には必要のない技術です。
しかしながら、トゥール ビヨンは限られたブランドにしかできない複雑な機能になります。トゥール ビヨン搭載モデルは価格も高くなりますが、高いステータス性を示すことができる腕時計です。